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アスベストとは

「夢の素材」アスベスト

アスベスト

アスベストは天然に産出する繊維状のケイ酸塩鉱物です。

繊維1本は直径0.02-0.35μm(髪の毛の5,000分の1)程度で、 綿のように軽く柔らかい形状で耐熱・耐火性や防音性、絶縁性など、 数々の優れた性質を持つことから「夢の材料」と言われ、 世界中で多くの建設資材、電気製品、自動車、家庭用品等に重用されてきました。

しかし、空中に飛散した石綿繊維を長期間大量に吸入すると、 肺癌や中皮腫の誘因となることが指摘されるようになりました。

【写真】アスベスト原石(出典:厚生労働省パンフレット)

危険性の顕在化

危険性の顕在化

しかし、20世紀後半に入ると徐々にアスベストと健康被害との関係性が科学的に解明されていき、アスベストの使用を規制あるいは禁止する国が増えていきました。

日本でもアスベストによる健康被害は比較的早くから指摘されていましたが、2005年に「周囲にアスベストが存在するだけで誰でも健康被害を受ける可能性がある」ということがマスコミに取り上げられ、大きな社会問題となったことからアスベスト使用規制が一気に本格化しました。

使用は禁止されたものの…

2006年9月1日に施行された改正労働安全衛生法施行令により、日本ではアスベスト及びアスベストを重量の0.1%を超えて含有するすべての物の製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されました。 しかし、私たちの身の回りにはすでに吹付けアスベストやスレート、建物内の断熱材など大量のアスベストが存在します。このため、将来これらの建物の建て替え時期には数十万、数百万といったアスベスト健康被害者がでるのではないかと心配されています。
アスベスト輸入量は約1000万トン
2040年には男性だけで十万人以上が死亡する可能性があります。

危険性の顕在化

アスベストの用途

建材の分布

アスベストの使用が法的に規制されるまで、アスベストはRC造(鉄筋コンクリート)、S造(鉄骨)、戸建住宅など、一般住宅を含むほとんどの建物で使用されてきました。 吹付けアスベストや断熱材、ボード、スレートとして使用されるほか、住宅の内装材・外装材にも目に見えない形で含まれるなど、あらゆる場所でアスベストが何らかの形で使用されています。

建材の分布

建材の分布

建材区分と製造時期

アスベストの建材への使用は建材の種類によって段階的に規制されており、築年数や建材の種類によってアスベストが含まれている かどうかをおよそ判断することができます。

アスベスト建材は大きく「飛散性」(直接外気に接触する場所に施工され、飛散しやすい状態)と非飛散性(外気とは遮断されている、あるいは飛散しにくい状態に加工されている)に区分され、またさらに飛散性のアスベストは吹付け材を「レベル1(著しく発じんしやすい製品)」、その他の建材を「レベル2(発じんしやすい製品)」に分類し、非飛散性のものは「レベル3(発じん性の比較的低い製品)」と位置づけています。
レベル1にあたる吹付け材は遅くとも1989年には製造を終了し、レベル2では煙突石綿断熱材以外のすべてのものが2000年までに、レベル3もすべての製品が2004年までに製造を終了しています。

(例)耐火被覆用吹付け(例)煙突断熱材(例)スレート屋根

 

アスベスト含有建材と製造時期

建設業労働災害防止協会「建築物の解体等工事における石綿粉じんばく露防止マニュアル」、 杜団法人 日本石綿協会「既存建築物における石綿使用の事前診断監理方針」(杜)建築業協会による調査をもとに作成

石綿障害予防規制区分 種類・(施行部位) 建材の種類(商品名・JIS規格) 製造時期
飛散性(特別管理産業廃棄物「廃石綿等」) 吹き付け材
レベル1
(著しく発じんしやすい製品)
吹付け材 吹付け石綿(全商品) ~1975
石綿含有吹付けロックウール ~1987
湿式石綿含有吹付け材 ~1989
石綿含有パーライト吹付け ~1989
石綿含有バーミキュライト吹付け ~1988
保温材等
レベル2
(発じんしやすい製品)
耐火被覆材
(S造の梁・柱など)
石綿含有耐火被覆板 ~1978
石綿含有珪酸カルシウム板第2種 ~1999
断熱材 屋根用折版石綿断熱材 ~1989
煙突石綿断熱材 ~2004
保温材
(配管エルボ、ボイラー等)
石綿保温材(旧JIS A 9502) 1914~1980
けいそう土保温材(旧JIS A 9503) 1890~1955
パーライト保温材(旧JIS A 9512) 1961~1980
石綿珪酸カルシウム保温材(旧JIS A 9510) 1951~1980
水練り保温材 ~1988
非飛散性(石綿含有産業廃棄物) その他石綿含有建材(成形板等)
レベル3
(発じん性の比較的低い製品)
内装材
(壁、天井)
スレートボード(全商品) ~2004
珪酸カルシウム板第1種 ~1997
パルプセメント板 ~2004
スラグ石膏板 ~2004
押出成形品 ~2004
石綿含有岩綿吸音板 1964~1987
石綿含有石膏板ボード 1970~1986
耐火間仕切り 珪酸カルシウム板第1種 ~1997
床材 ビニル床タイル ~1987
フロア材 ~1990
押出成形品 ~2004
外装材
(外壁、軒天)
窯業系サイディング ~2004
スラグ石膏板 ~2004
パルプセメント板 ~2004
押出成形セメント板 ~2004
スレートボード(全商品) ~2004
スレート波板(全商品) ~2004
珪酸カルシウム板第1種 ~1997
屋根材 住宅化粧用スレート ~2004
煙突材 石綿セメント円筒 ~2004

製造時期は、最も遅くまで製造していたものの年数を示しています。これに該当している時期においても製造により石綿を含有していないものもあります。
※作業で使用した器具、工具、足場等については、付着した石綿を除去した後でなければ、作業場外に持ち出してはいけません。

アスベストの危険性

アスベストの有害物性

アスベストはケイ酸塩鉱物の一種で、成分自体に毒性があるわけではありません。アスベストの有害性はその形状と性質にあります。
アスベストは非常に細い繊維の集合体です。その太さはアスベストの種類にもよりますが、およそ0.02~0.35μm(マイクロメートル)と言われています。これは髪の毛の太さの5,000分の1程度の細さです。

アスベストは一見綿のように見えますが、繊維の1本1本には弾力はほとんどなく、非常に脆く折れやすい性質を持っています。このため、軽い衝撃を与えただけで繊維が粉々に砕け散り、目に見えないほど微細な針状の粉塵(ほこり)となって舞い散ります。

この粉塵を人が吸い込むと、アスベストの針は肺に達して肺胞に突き刺さります。針を体外に排出するため、人体の免疫システムが異常反応を起こして「石綿肺」「肺がん」「中皮腫」などを引き起こす原因となります。

クリソタイル

クリソタイル

クロシドライト

アモサイト

アモサイト

クリソタイルクロシドライトアモサイト
アンソフィライト

アンソフィライト

トレモライト

トレモライト

アクチノライト

アクチノライト

アンソフィライトトレモライトアクチノライト

アスベストの有害物性とサイズについてアスベストの有害物性とサイズについて

アスベストの有害度は粉塵のサイズに大きく左右されます。
一般にもっとも有害とされるのは太さ0.3μm×長さ5~10μm程度のサイズといわれ、世界保健機関(WHO)の基準は「長さ5μm以上、かつ細長比が1:3以上サイズまた太さは0.3μm前後」となっており、アスベスト濃度測定ではこのサイズ以上を対象としてカウントします。

アスベストの規制動向の歴史

使用制限から安全調査に至るまで

アスベストの使用制限が日本で最初に行われたのは1971年のことです。
2006年には労働安全衛生法施行令の改正で石綿含有重量0.1%超を含有するものの製造、輸入、譲渡、提供、使用が原則的に禁止されました。
そしてそれ以降は主に建築物や工業製品に使用されたアスベストの安全性に関する分析方法矢処理方法についての法整備が進められています。
この40年間の主な流れをまとめたのが下図の年表です。

1971年特定化学物質等障害予防規則の制定(石綿などの物質の取り扱いを規制)
1972年国際がん研究機関が石綿の発がん性指摘、国際労働機関専門家会議で石綿の職業がん発生指摘
1975年アスベスト5%以上含有する吹付け作業を原則禁止
1976年旧労働省・労働局長通達で、危険性指摘
1987年業界自主規制により青石綿の使用中止
1988年 労働安全衛生法施行規則・作業場所での飛散量を規制する管理濃度の策定
1989年大気汚染防止法改正(石綿粉じんを「特定粉じん」に指定し、発生施設の届出を義務づけ、敷地協会濃度基準(10本/L)設定等)
1992年廃棄物処理法改正(廃石綿等を特別管理産業廃棄物に指定)
1995年特定化学物質等障害予防規正改正(
1%超含有する

青石綿・茶石綿・白石綿の吹付け原則禁止)労働安全衛生法施行令改正(発がん性が高い青石綿、茶石綿の製造・輸入・譲渡・提供又は使用を禁止)
2002年建設リサイクル法(一定の大規模解体工事の場合、事前調査・事前措置(石綿除去)の義務付け)
2004年労働安全衛生法施行令の改正により石綿(白石綿含む)の使用禁止(1%の石綿含有率を超える特定10品目(建材、摩擦材、接着剤等)の製造、輸入、譲渡、提供又は使用の禁止)
2005年特定化学物質等障害予防規則により分離し、石綿初の単独規則である石綿障害予防規則の制定(建築物の解体や改修作業、使用建築物での対策を定めたもの)
2006年労働安全衛生法施行令の改正(石綿含有重量として0.1%超を含有するもの(代替が困難な一部の製品等を除く)の製造、輸入、譲渡、提供、使用を禁止)
大気汚染防止法改正(石綿が使用されている建築物に加え、石綿が使用されている工作物についても解体作業等による飛散防止対策を義務付け)建築基準法の改正(増改築時の石綿除去、囲い込みを原則として義務付け)

廃棄物処理法施行令改正(無害化処理大臣認定制度創設、アスベスト廃棄物適正処理の規則強化)

宅地建物取引業法(取扱時、石綿調査に関する事項を重要事項説明の対象とすること(書面交付・説明))

石綿障害予防規則(発注者は工事請負人に対し石綿含有廃棄物の使用状況を通知するよう努めること)
2007年建築基準法施行規則改正(不特定多数が利用する施設は定期的に調査し、特定行政庁へ報告すること)
2008年厚生労働省が基安化発第206003号(石綿の使用有無の分析調査の徹底)を出し、青、茶、白以外の新3種も加えすべての石綿を分析対象とすることを通達
2009年石綿障害予防規則(隔離措置範囲の拡大として、石綿等の切断等の作業を伴う保温材、耐火被覆材等の除去作業においても吹付け石綿の除去の作業と同様な措置を行うこと。隔離措置解除にあたり、吹付け石綿や保温材、耐火被覆材などを除去した部分を浸潤化した後でなければ隔離措置をといてはならない等)

 

改正大気汚染防止法アスベストには耐熱・耐火性や防音性など優れた特長が多く、用途によっては代替品を探すことが非常に困難でした。
このため高濃度のばく露、または長期期間にわたるばく露によって健康被害のリスクがあることがわかってからも、なかなか全面禁止にできなかったという経緯があります。
また、実際にどのくらいの濃度・期間を基準に規制するべきかという科学的根拠についてもさまざまな議論があり、結論が出るまでに長い検討期間が必要でした。

なお、建物の解体工事によるアスベストの飛散を防止する対策の強化を図り、人の健康に関わる被害を防止するための「改正大気汚染防止法」が2013(平成25)年6月17日に成立、6月21日に公布されています。施行は公布後1年以内の予定です。

この改正によって、建物の解体工事などの際に工事発注者にも一定の責任が課せられました。

またアスベストが建物内でどのように使用されているかの事前調査の徹底や行政の立ち入り対象拡大など、行政の指導力や強制力の権限強化が盛り込まれています。